現在大阪に住んでいますが、お向かいのお子さんはいわゆるカギっ子で、学校から帰って来るといつも胸元からぶら下げているカギを開けてお家に入っています。
どなたもお家にいらっしゃらない様ですのに、玄関口で『ただいま~』と無邪気に声を上げて言っている様子にはいつも胸が痛みます。
ただ元気に過ごされている様ですので、近所の住人として温かく見守っています。
しかしある日のこと、それは雪の舞う日のことでした。
いつものようにそのお子さんが学校から元気な足音で帰宅している様子が聞こえましたが、その後の『ただいま~』という無邪気な声がありませんでした。
どうしたのだろうと少しの間様子を伺っていますと、お子さんは玄関の前に膝を抱えて座り込んでいました。
これはいけないと私はそのお子さんに駆け寄って声を掛けたのですが、『大丈夫』と言って事情を話してくれません。
それでは寒い中いつまでも埒が明かないので、「無理しちゃだめよ とりあえず風邪引いちゃうといけないからのおばさんのお家に入りましょう」と誘いました。
するとそれでもしばらく頑なになっていましたが、やがて腰をあげてこちらへ入ってくれました。
そして温かいお茶を差し出すと、お腹が空いていたのかごくごくと一気に飲み干して、おにぎりとお味噌汁とおかずを進めると勢いよく食べていました。
お腹がいっぱいになると表情が穏やかになって、事情を尋ねるとご両親が色々とあったようで、それに加えてそれに思い悩んでいたところにカギをどこかに落として来てしまったということでした。
事情を聞いて私はそれではと、「お父さんかお母さんが帰って来るまでここにいようね」と言いますと、今度はすぐにうなずいてくれました。
そして親御さんの帰りを伺っていたのですが、その日のお帰りは深夜で、これまでの経緯をお話しますと謝られていました。
そして翌日、玄関のカギを特殊なものに交換されて、また同じようなことがあった場合にお子さんがお家の中に入れるようにされていました。
そのお子さんはその件以来うちの家へよく遊びに来るようになって、こちらも「困ったことがあったらいつでもおいで」と言ってあげています。
何はともあれ、今回の様なことがあってもお家に入れるように段取りされてほっとしました。
カギの交換をされてお家には入れるようになりました
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