カギの交換が、とても大事なことなんだと感じさせられた出来事がありました。
以前住んでいた大阪のマンションで、管理組合の役員をしていたときのことです。
そのマンションは、地域で有名な超大型マンションで、世帯数が250以上ありました。
マンションひと棟で、ひとつの街といっていいくらいの規模で、管理組合の仕事もそれに応じて、さまざまな内容に幅広く分かれていました。
その仕事のひとつに、各戸の退去と入居の管理がありました。
管理組合の基本かつ重要な仕事で、理事長や副理事長ほか、数名の確認が求められていました。
あるお宅の引越しの際に、そこの住人の方から、防犯のためにカギを交換していたんだと申し出がありました。
万が一のときの合鍵が、マンション管理会社に必要だろうと申し出てくださったのですが、あいにく合鍵を紛失してしまって、ひとつしか無いとのお話でした。
防犯用に交換したカギでしたから、ふつうのカギと少しことなるタイプのものでした。
街のサービス店で合鍵を作れるか聞いてみたところ、やってもいいがうまく使えないかもしれないとのことで、それでは交換したときの業者に頼んで、あたらしくカギを作ってもらおうとなりました。
しかし、その業者さんと連絡が付きません。
調べてみると、すでに廃業してしまっていたんです。
そのままのカギでは、もうひとつ合鍵を作るのはむずかしいだろうと管理組合で相談がまとまり、住人の方の責任の下で、カギ全体をあたらしいものに交換してもらう算段になりました。
本来なら、カギの交換は所有者の権限で、管理組合の仕事の範疇ではありません。
しかし、このマンションでは以前に、ひとりぐらしの高齢の方が家の中で倒れ、丸一日以上気づかれないままになったことがありました。
結果的には助かったのですが、気づいたほかの住人も合鍵が無くては開けようが無く、たいへんな手間がかかったんです。
そのため、やはり合鍵があったほうが居住者みんなにとって安心だろうと、お願いしたのでした。
住んでいた方のご好意もあり、合鍵はマンション管理会社にしっかり管理され、その後は無事にみなさん暮らせていました。